ごあいさつ

 今後、急速に高齢化が進むわが国において、医療を必要とする患者数は増加する一方、医師や看護師などの医療従事者数や病院の病床数の不足が問題となっており、千葉県も例外ではありません。また、高齢者は病状のためだけでなく身体的にも通院が困難となります。 この現状を解決するためには、住み慣れた地域で安心して医療や介護を受けられる在宅医療の推進が必要ですが、在宅医療の拡がりはまだ十分とは言えません。チーム医療である在宅医療において、薬の専門的知識をもつ薬剤師の存在意義は極めて高く、重要な役割を果たすことが期待されています。在宅医療を始めたいが、知識・経験不足により最初の一歩が踏み出せない薬剤師が多数存在します。

 現在、わが国の慢性心不全患者数は約100万人で、今後高齢化社会をむかえ心不全患者数はさらに増加すると予測されます。心不全患者は高齢者が多く、服薬している薬剤の種類や数が多いです。心不全の悪化による入退院を繰り返すことが多いため、入退院を減らすことは患者の生活の質(QOL)の改善だけでなく医療費の軽減にもつながります。したがって、地域医療の中で心不全患者をどのように診療するかは喫緊の検討課題です。 在宅医療を推進するためには、多職種からなるチーム医療の実践が重要です。特に、薬の専門家である薬剤師は服薬指導や薬剤管理だけでなく、効果・副作用の確認や処方設計の提案なども行うことで、より効果的な治療が可能になるため、心不全のチーム医療を実践する上で、薬剤師の意義や期待される役割は極めて大きいと思われます。

 千葉大学大学院薬学研究院・薬学部では平成27年度より千葉県の薬剤師を対象に在宅医療を実践できる薬剤師育成のための講習会を継続的に開催していますが、その参加者は多く好評を得ています。現在、国内の学部教育において在宅医療で活躍できるスキルを身につける効果的な教育プログラムはなく、高齢化社会に向けた画期的な教育プログラムの構築が求められています。今後、グローバルエイジング時代を迎え、高齢化先進国である日本の対応が注目されている中で、本教育プログラムが千葉から全国へ、さらに全世界へと発信されグローバルモデルとなることが期待されます。

千葉大学大学院薬学研究院 実務薬学研究室
教授 関根 祐子