Research / 研究活動
含窒素天然物合成
化学合成は自然界からわずかしか得られないものを必要なだけ作ることを可能にするだけでなく、天然物より優れた薬理作用を持つ化合物を設計して生み出すことが可能です。こうした利点を生かして、よりよい医薬品の候補になる化合物を作り上げていく夢のある創造的な研究が続けられています。
コプシアアルカロイドは特徴的な五環性骨格(6/5/8/6/5)からなるインドリンアルカロイドであり、ユニークな薬理作用を示すことが期待されますが、植物からの単離量が少ないため十分な活性評価がなされていません。また、その複雑な骨格の構築は合成化学的見地からも非常に興味深いものです。当研究室では、コプシアアルカロイドの化学的合成の先駆けとして、Lapidilectamの合成研究を精力的に行っています。さらに、そこで得られた知見を基に、シクロプロパンを含む六環性骨格を有し、抗悪性黒色腫作用を有するLundurine類の合成も達成しております。
触媒的不斉反応により合成されたキラル化合物はそのままでは何の役にも立ちません。天然物や生物活性物質への変換を目指すことで有用な合成中間体となり、開発した反応の価値が高まることになります。目標とする化合物の選択も重要です。生物活性や構造の面白さ等から選びますが、化合物の見た目に騙されてはいけません。小さくてシンプルな化合物でも合成するのは難しいものもあります。医薬品の合成中間体や複雑な骨格を持つ天然物の合成を目標に研究を行っています。
また、全合成を進める中で新たなケミストリーに出会うことも。合成のテーマの中で新規反応の種が見つかることもあります。『世界で初めての発見』はどこに潜んでいるかわかりません。
新反応開発 /
触媒創生
従来、求核剤に対して反応性が低かった単純アルキンなど炭素ー炭素多重結合の求核的シアノ化を実現し、応用展開を行っている。
シアノ基はマスクされたカルボニル基であり汎用性が高く、その導入法の開発は重要な課題である。当研究室ではPd(II)がアルキンの効果的活性化剤になることを見いだし、求核的な触媒的シアノ官能基化を世界に先駆けて報告した。鍵工程となるのはシアノパラデーションという前例のない反応ステップであることも見いだし,様々な環化反応へ応用展開している。
独自の不斉触媒を開発することで、光学活性な環状構造の新しい構築法の開発に取り組んでいます。
天然物や医薬品などの有用分子は、その多くが分子中に環構造を持っています。そのため、環を作る反応を開発することは、単に有機合成化学の1反応開発に留まらずに、長い目で見れば医薬科学の発展にも寄与することができると考えています。適用した触媒、反応様式はそれぞれ異なりますが、これまでに五員環から八員環までの炭素環骨格構築に成功しています。
触媒の物性評価と
反応機構解析
触媒の真の活性種はどのような構造なのか?立体化学の制御はどのようにして起こっているのか?といった疑問を解決するため、触媒反応のメカニズム解明に向けた研究も行っています。
薬品合成に関係ない? 自分達の扱っている化合物に関する事である限り、好奇心は尽きません。興味のあることに突き進めるのも大学での研究の良い所です。
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