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Research

研究概要

研究内容

製剤工学研究室では、“分子製剤学:Molecular Pharmaceutics”の概念に基づき、有効性および安全性の高い医薬品製剤を得るための研究を行っている。製剤中の有効成分や添加剤の分子状態と、製剤物性や有効性との関連性を明らかとし、そこで得られた情報をフィードバックすることで、よりよい製剤設計指針の確立を目指している。研究室ではこれまでに、非晶質固体分散体、薬物ナノ粒子、リポソーム製剤、脂質製剤、薬物複合体(塩・共結晶・シクロデキストリン複合体)、多孔性物質(メソポーラスシリカ・有機ナノチューブ)など多岐にわたる特殊製剤の物性評価を行っており、分子状態評価に基づき、特殊製剤の効果を最大化するための研究を行っている。加えて、当研究室では固体から溶液、懸濁状態も含めた様々な製剤について分子レベルからnmオーダーの情報を得るために、各種物性評価法の開発を行っている。現在取り組んでいる中心的な研究プロジェクトについて下記に紹介する。

研究内容

1.固体NMRによる製剤評価技術の確立

研究内容

固体製剤中の有効成分や添加剤の分子状態は製剤物性を決定づける重要なファクターである。実際の製剤開発においても示差走査熱量計などの熱測定、X線回折や赤外分光などの分光学的手法が広く用いられている。当研究室ではこれら分析技術に加えて、製剤中の分子状態評価技術として固体NMRを利用した解析を行っている。固体NMRはMAS(magic-angle spinning)及びハイパワーデカップリングを利用し、固体試料の高分解NMRスペクトルを得ることができ、製剤の原子レベルでの物性評価が可能となる技術である(Fig. 1-1)。
これまでの研究において、固体NMRを利用することで、非晶質固体分散体などの特殊製剤中の薬物及び添加剤間の相互作用を官能基レベルで詳細に明らかとしている(Fig. 1-2)。得られた分子状態と製剤物性の関連性について解析を行い、製剤の物理化学的安定性の予測に成功している。他にも多孔性担体や薬物ナノ結晶製剤など様々な特殊製剤についても、固体NMRの応用研究を行っている。また、固体NMR緩和時間測定を利用した製剤の混和性評価や物理的安定性予測法に関しての研究も行っている。

研究内容

2.ナノ製剤の物性評価法の開発

研究内容

薬物の溶解性、吸収性や動態改善を目的として、リポソーム、薬物ナノ結晶、ナノエマルションなど様々なナノ製剤が研究されている。しかし、これらナノ製剤の物性評価手法は未だ十分に確立されておらず、品質管理の面でもナノ製剤の開発には課題が残されている。当研究室ではクライオ透過型電子顕微鏡法(cryo-TEM)や液中-原子間力顕微鏡(AFM)等の測定技術を用い、ナノ製剤の詳細な構造解析を行い、製剤物性との関連性について検討を行っている。
これまでの研究において、調製法の異なる2種の薬物封入リポソームについてcryo-TEM測定を行った結果、封入された薬物構造体の形態の違いやリポソームの変形が認められている(Fig. 2-1)。これら2種のリポソームは動的光散乱による解析では同一の粒度分布が得られており、cryo-TEMを利用した解析がナノ製剤の形態を含めた品質評価に重要であることが示されている。また、液中AFMによる懸濁液中におけるナノ構造体の形態や力学的特性の評価など、nmオーダーでの物性評価手法の開発も行っている。
また、当研究室ではナノ粒子界面の添加剤や薬物の分子状態評価手法の開発研究も行っている。特に、固体NMR技術を応用したsuspended-state NMR技術の開発を行っており、懸濁状態のナノ粒子界面における薬物や添加剤の分子状態を明らかとすることに成功している(Fig. 2-2)。得られたナノ粒子界面の情報と、ナノ粒子の分散安定性などの製剤物性との関連性について研究を行っている。他にも、脂質ナノ粒子やエマルション製剤など、懸濁状態の製剤の物性評価にsuspended-state NMR技術を応用する研究を行っている。

研究内容

3.薬物過飽和挙動の解明

研究内容

難溶性薬物の溶解性や吸収改善技術として過飽和製剤が広く研究されている。過飽和状態とは薬物の結晶溶解度以上に薬物が溶解した状態であり、薬物の吸収改善技術として注目されている(Fig. 3-1)。近年、薬物過飽和溶液中において薬物濃度が非晶質溶解度を超えると薬物が水相から相分離を起こし、薬物濃縮相を形成することが報告されている(liquid-liquid phase separation)。しかし、薬物の相分離挙動や薬物過飽和状態の安定化機構等については未だ不明な点が多く残されており、詳細な解析が行われていない。当研究室では非晶質固体分散体、脂質製剤など、各種特殊製剤によって形成される過飽和溶解挙動についてNMRを中心とした分光学技術により分子レベルでの定量的な評価を行い、過飽和溶解状態や相分離挙動と、薬物吸収性との関連性について検討を行っている(Fig. 3-2)。

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